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ドラえもんは仏教?

掲載日: 記事No.63

今回は、京都女子大学准教授、黒田義道先生のお話しをご紹介させていただきます。

 

-「1999年に公開された映画『ドラえもんのび太の結婚前夜』をご存知でしょうか。本作は2014年公開の『スタンドバイミードラえもん』にその一部がリメイクされています。内容は次のようなスト-リです。

ある日、のび太君は出木杉できすぎ君としずかちゃんが劇の練習をしているのを見ました。出木杉君がしずかちゃんにプロポーズするシ-ンです。のび太君はしずかちゃんとの結婚を心から願っています。出木杉君は、スポーツ万能の秀才です。劇とはいえ、不安になったのび太君は、勇気を振り絞ってドラえもんとタイムマシンに乗り、結婚相手を確かめるため未来に向かいます。のび太君の結婚相手はしずかちゃんでした。

明日はのび太君としずかちゃんの結婚式という日の夜です。しずかちゃんは、のび太君とうまくやっていくことができるか、お父さんに不安を打ち明けます。しずかちゃんのお父さんは、可愛い一人娘をやさしく、しかし力強く励ましました。

「やれるとも!のび太君を信じなさい!」「あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ!それが一番人間にとって大事なことだからね!」

この場面はドラえもんの数ある感動シ-ンの中でも、特に知られているそうです。

「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる」ことが、「一番人間にとって大事なこと」と断言されています。この人間像が、多くの方々の共感を呼んでいるのです。

この理想的人間像はとても仏教的です。仏教では、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができるやさしさを「慈悲」といいます。『観無量寿経』というお経に「仏の心は大いなる慈悲の心である」とあります。そして慈悲の心を完璧に持っている方を「仏さま」と申し上げます。仏さまは、仏教で理想とする人間像なのです。」-

 

皆さんはこのお話しをどの様に感じられましたか。いま、多くの政治家を始め「○○ファ-スト」と声高に叫ぶ人たちがいます。現代において、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことは、なぜ大事なのでしょうか。それは、私たちが一人で生きているのではなく、様々に関わり合い、共に生かされているからです。「自分ファ-スト」では、のび太君のような豊かな心は身につかないのです。

のび太君には、ドラえもんをはじめ、個性豊かな友人たちがいます。日頃はぶつかっても、ここぞという時に力を合わせます。その関わりの中で、のび太君は共に生かされていることを感じ、その心に人の幸せを願い、不幸を悲しむ力が培われているのだからでしょう。

仏さまのように、理想を完璧に実現することは困難です。けれども、私たちはその理想を求め、願う事こそが大切ではないのでしょうか。

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