今回は京都女子大学准教授、黒田義道先生のお話しを紹介させていただきます。
私が好きな絵本の一つに『はやくはやくっていわないで』(益田ミリ:作・平澤一平:絵/ミシマ社)があります。子どもの気持ちが可愛らしい船の姿で描かれます。
子どもたちは一人ひとり違います。人柄、得意、苦手、成長の早さ、などなど。けれども大人は、ついつい画一的な基準で子どもを比較してしまいます。その時、船の気持ちは以下の様に表現されています。
くらべられると どきどきする / どきどきすると どうなるの
どきどきすると ひんやりする / どきどきすると ちいさくなる
まっくらで かなしい きもち
理想や目標を持つことは大切なことです。けれど、どんなにがんばっても、そこへの到達が遅れたり、できなかったりした経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。そこで船は言います。
だから あのさ / はやく はやくって いわないで
*この言葉を契機に、大人の言葉も入るようになります。
わらったり しない? / わらったり しないよ
まってて くれる? / まってるよ みんな いっしょ
比較を離れ、一人の子どもに正面から向き合った大人の言葉です。
小さな船は力強く去って行きます。
絵本『はやくはやくっていわないで』の末尾は「みんないっしょ」です。この「みんな」は、すべての子どもを示しつつ、一人の子どもに向き合っています。「みんな」の意味は、「あなたが大切」ではないでしょうか。「いのちは大切」を伝えたいならば、必要なのは「あなたが大切」という真心であり、子どもにそれを感じさせる、仏さまや人とのつながりでしょう。
黒田先生のお話しは如何でしたか。阿弥陀さまは「いのちある者みんなを救う」と願われました。親鸞聖人はその深いお心が「あなたを救う」であることを知らされました。その感動を「阿弥陀さまの願いはわたし親鸞一人のためであった」としみじみおっしゃいます。
私たちはだれもが自分に向けられた真心を知らされた時、それが生きる力になるのではないのでしょうか。
今はネットで簡単に絵本が購入できます。皆様も絵本『はやくはやくっていわないで』をお読みになっていただきたく思います。