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大谷翔平選手をどのように育てたか

掲載日: 記事No.93

先日、目を通していた雑誌に世界的建築家の隅研吾氏と大谷選手を育てたWBC日本代表、栗山監督の興味深い対談がありましたので紹介させていただきます。

〈隈〉

話は新人教育に及びましたが、栗山さんが大谷選手などをどのように育てられたかといったお話も、ぜひ聞きたいですね。

〈栗山〉

僕が特別に何かをしたから彼が育ったというわけではありません。ただ、僕が意識したのは前例がどうだとか、野球とはこういうものだとかいう先入観をいかに自分自身が払拭できるかということでした。真白な感覚で大谷翔平という選手を見た時に、投手としても打者としても絶対に世界に通用することは確かでした。

僕如きが自分の感覚で彼の可能性を閉ざすようなことがあってはいけない、決められるのは野球の神様だけだと思ったものですから、技術的なことはほとんど翔平に任せて、僕と球団のゼネラルマネジャー(GM)は、それを削いでしまうような要因を排除することに力を入れました。

それに、彼が成長する上では、根っからの野球好きということも大きかったですね。翔平を見ていて僕らも勉強になったのは、いま隈さんが言われたように野球も結局は人間がやるものだということでした。

人間として駄目な部分は誰が見ても駄目なわけですし、反対に欠点を改めて人間として成長していけば、野球選手としても成長していく。その手本を示してくれたのが翔平だったんです。

〈隈〉

なるほど。

〈栗山〉

翔平には「野球が上手くなりたい。そのためには何でもやります」というはっきりしたスタンスがありましたから、人間学の教えを含めて彼の成長のために我われはやれる限りのことをしました。だからといって何かを無理強いしたことはありません。うちのチームの特徴として、必要以上に何かを教えたりすることはしないんですね。

普段は黙って練習や試合を見ていて、何かを聞かれた時に「こういう方向がいいんじゃないか」と教える。翔平をはじめ選手たちの成長を見ていると、この指導の方向で間違ってはいなかったという感覚を抱きました。

だから、その分、僕たち指導者の勉強が欠かせないんです。選手たちよりも10倍は勉強しないと彼らの成長に追いつかないし、人間的に成長させてあげることができない。

指導者としての僕の課題は自分が人間として大きくなることだと思っていますので、だからこそ過去1000年、2000年の間、様々な苦しみを味わいそれを乗り越えてきた先人たちの教えにも積極的に学んでいるわけです。

 

如何でしょう。名選手は名伯楽によって育てられる。それは技術を超えた、人間力をどう育てるかという事に尽きると思います。だからこそ、大谷選手は野球選手の技術だけでなく、人間「大谷」として世界中の人々から愛されるのだと痛感します。私たちも、目先のお金や地位でなく内面の自分を育てる事に日々尽力したいものです。

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