詩人谷川俊太郎さんは戦後、平和とは何かを自らの言葉で問い続けてきました。
少年時代に空襲を体験した谷川さんの目に、戦争はどのように映ってきたのか。戦争を知らない世代に平和をどのように伝えていくのか。先日中日新聞に掲載された谷川さんの詩に込めた「平和の思い」を紹介します。
平 和
平和
それは空気のように
あたりまえなものだ
それを願う必要はない
ただそれを呼吸していればいい
平和
それは今日のように
退屈なものだ
それを歌う必要はない
ただそれに耐えればいい
平和
それは散文のように
素気ないものだ
それを祈ることはできない
祈るべき神がいないから
平和
それは花ではなく
花を育てる土
平和
それは歌ではなく
生きた唇
平和
それは旗ではなく
汚れた下着
平和
それは絵ではなく
古い額縁
平和を踏んづけ
平和を使いこなし
手に入れねばならぬ希望がある
平和と戦い
平和にうち勝って
手に入れねばならぬ喜びがある
「うつむく青年」(山梨シルクセンタ-出版部)
「自選 谷川俊太郎詩集」(岩波文庫)から
戦争を体験した事のない私たちにとって「平和」を本当に実感する事はできないと思います。
しかし、原爆投下の広島、長崎、そして終戦記念日に幾多の証言、映像を見ると「平和」は守られなければならない事、そして平和は人から与えられるものでないという二つの事を心に留めておかねばならないと、このお盆の時期に切に感じるものです。
住 職