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当寺院では、月に一度皆様にわかりやすい法話、

慈悲(じひ)

掲載日: 記事No.96

 日々、暑い日が続いていますが皆様、お変わりございませんでしょうか。今年は戦後80年、ウクライナ、ガザの現状を見るにつけ、今の平和は多くの先人の犠牲に成り立っており、私たちは平穏な日を生きているという事に、感謝の念を抱きながら生きて行かねばならないとの思いを一層強く持ちます。

 さて、仏教が大切にしてきた言葉に「慈悲(じひ)」という言葉があります。「慈悲」の「慈」は、インドの古い言葉で「マイトリー」という言葉の訳語で、見返りを求めない「純粋な友愛」を意味しています。「悲」は「カルナー」の訳語で、他者の悲しみや苦しみを共に痛んでいく心を意味していました。これは他者の痛みを自分と関係のないものとして眺めていくのではなく、わがことのように引き受けていく共感の心です。

仏さまは私たちの苦悩をご自身の痛みとして受け止め、響きあう心をお持ちだからこそ、私たちのしあわせを心から願い続け、その実現のためにはたらき続けてくださるのです。

 私たちは互いに様々な痛みを抱えて生きています。誰にも言えない苦しみや悲しみを、心の中に抱えて生きています。しかし仏さまは私の抱える痛みに対して、「自分で治しなさい」とか、「自分で何とかしなさい」とはおっしゃらず、共に痛み、共に泣いてくださいます。「つらいね。悲しいね」と、どこまでも苦悩の私に寄り添ってくださる温かな心を慈悲というのです。

 この仏さまの慈悲の心こそ、尊い真実(まこと)であると受け止めてこられたのが、多くの先人方が大切にされてきた仏教的な価値観です。わたしたちも未来を背負うお子様達もこの「慈悲」の心を持ち続けていきたいものです。

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