今回は仏教作家、ひろさちや先生が「ないおん」新聞に寄稿されたお話しを以下に紹介させていただきます。
子どもには、「過去」も「未来」もありません。
ただひたすら「現在」を生きています。だから、遊びに夢中になっている子どもに、明日のことを考えて早く寝なさい、とおとなが言うのは、子どもには迷惑なんです。
だって子どもには、いま現在が充実していれば、それで十分なんですから。
これは、本当はおとなにも言えることですよね。
何かに夢中になっているとき、あるいはお酒を飲んでいるようなとき、おとなだって明日のことは考えていません。「明日があるから」と言われても「なあに、明日のことは、明日考えればいいさ」と、あなただって変な啖呵を切ったことがあるでしょう。
そのときあなたは、童心に帰っているのかもしれません。
同じことを、お釈迦様が言っておられます。
過去を追うな。
未来を願うな。
過去はすでに捨てられた。
未来はまだやって来ない。
ただ今日なすべきことを熱心にせよ。 『マッジマ・ニカ-ヤ』
過ぎ去ったことをじくじく考えても、どうしようもありません。
明日のことをあれこれ思い悩んでも、仕方がありません。わたしたちは、いまなすべきことをしっかりとすればよいのです。
未来のことは、阿弥陀様におまかせすればよい。わたしはそう考えます。
けれども、それが分かっていても、やはりわたしたちはわが子の将来が気になります。それで子どもに、あれこれと干渉したくなるのです。
それはそうですが、ほとんどの親が子どもに与えようとしているのは、 ―将来の利益― ではないでしょうか。いま一生懸命努力すれば、将来、一流大学に入り優良企業に入社、そして幸福になれことができる。だからいま、一生懸命がんばりなさい。親はそのように言います。でも本当にそうなることが保証されていますか?いや、それが保証されていたとしても、もしもその子が高校1年で事故で死ねば、どうなりますか?その子は、自分の一生をただ将来のためだけに生きたことになる。それじゃあ、あまりにも気の毒です。子どもが本当にほしいのは ―現在の幸福― だということを忘れないでください。
如何でしょうか。私も私なりに子どもの将来を案じ、我が子に「あれやこれや」と口酸っぱく言ってきました。しかし、本当に大事な「現在」を私自身が忘れていた様な気がします。現在を大事にするからこそ「未来」が輝くのですね。この「今」、この「一瞬」をしっかりと丁寧に、精一杯生きていきたいと思います。